消化器・肝臓・胆のう・膵臓外科

1.高度医療への対応

奈良県総合医療センター消化器・肝臓・胆のう・膵臓外科は、奈良県における公的基幹病院の外科として、医学の進歩による先端の外科治療技術を常に導入し、高度な医療を行うことによって県民の健康に貢献するよう努めています。肝臓・胆のう・膵臓外科、下部消化管(結腸、直腸)外科、上部消化管(食道,胃)外科の各領域に専門的技能を有する指導医が常勤医として勤務しています。2018年に新築された病院における画期的な設備と最新の医療機器を常に導入することにより、高度な手術に対応できる体制を備えています。手術支援ロボットダビンチを用いた手術においては、海外の専門施設と国内のごく少数の施設でしか行われていなかったロボット支援膵臓手術を2019年から自由診療で導入して開始、2020年には、全国で約10施設の高度専門施設とともに国内初、近畿圏では唯一の健康保険適応での実施施設として認定されました。同様に、ロボット肝切除も2020年に導入、さらに少数の専門施設とともに国内最初の健康保険適応での実施施設として認定され経験を重ねております。直腸癌手術は、2018年から県内初のロボット支援下直腸手術を自由診療で導入、健康保険での実施施設として認定され近畿圏でも有数の手術実績を有するに至っております。また、胃・食道手術を専門とする日本内視鏡外科学会技術認定医が胸腔鏡を用いた低侵襲食道がん手術を行っており、胃がん手術にも2017年からロボット手術を導入しております。

2.地域に根差した総合病院

上記の高度医療に対応する機能と同時に、地域に根差した総合病院として、胆石症、そけいヘルニア、肛門疾患などの一般的な病気に対する手術も行っております。また、虫垂炎や消化管穿孔、腹部内臓出血、腸閉塞などの腹部の救急疾患に対する緊急患者への手術にも常に対応できる体制を整え、基幹病院として県民の健康を守る砦としての責務を果たすべく診療にあたっています。

3.がん患者を支える

当科は消化器がんの患者さんに対する化学療法も行っており、分子標的薬を含む最新の治療薬を常に導入してがん治療を行っております。同時に痛みなどの身体症状による苦痛を抑える治療も含め、がん患者をあらゆる面で支えていく役割も担っています。院内に組織されている集学的がん治療センターと連携し、ご家族とともにがん患者さんをトータルにサポートしていくことを当診療科の方針として掲げます。当院は地域がん診療連携拠点病院であるとともに、がんゲノム医療連携病院にも指定されており、近年注目されているがん遺伝子パネル検査を行える体制を有しております。

4.外科医育成のための専門研修

当院は、消化器・肝胆膵外科のほか心臓血管外科、呼吸器外科、乳腺外科、小児外科から成る外科系診療科群として、2020年度から日本外科学会/日本専門医機構の外科専門研修の基幹施設となり、当院の外科研修プログラムでの3年間で外科専門医の資格が取得できるようになっております。2020年4月以降、これまでに北は東北から南は九州に及ぶ様々な出身大学の計9名の外科専攻医が本プログラムによる外科専門研修を開始しております。病院全体として外科専門研修を着実に進めるとともに、専攻医の外科医としての成長と今後の発展に責任をもって取り組んでいきます。

外来担当表

月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日
1診 中川 福岡 吉川(高) 右田
2診 担当医 午前:石川
午後:松阪
午前:渡辺 根津
3診 西岡 久保 小倉 紙谷 松下
B-3午前 ストマ外来
外来受付:午前8時30分~午前11時00分まで(予約、急患を除く)

取り扱う病気

  • 胃がん、食道がん、大腸がん、肝臓がん、膵臓がん、膵神経内分泌腫瘍(P-NET)や膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)などの膵腫瘍、胆管がん、胆嚢がんなどの消化器の悪性腫瘍、胆道拡張症、ポリープ
  • 胆石症、ヘルニア(脱腸)、肛門疾患、大腸ポリープ、脾臓疾患
  • 急性虫垂炎、腹膜炎、腸閉塞、消化管穿孔などの外科救急疾患
  • 神経内分泌腫瘍(NET)、消化管間質腫瘍(GIST)や、腹部に発生した脂肪肉腫、悪性線維性組織球腫(MFH)などのいわゆる肉腫と呼ばれる希少がん
  • その他の外科疾患

※各疾患の詳しい情報については、上の「治療について」のボタンをクリックしてください

  • 当科は、外科系医療の全国調査 National Clinical Database(NCD)に参加しています

当科の特色

県民のための公的専門病院

当院は、奈良県民のための公的病院であり、営利目的の病院ではありません。県民の皆様の健康を守るために存在しています。地域に密着した心の通う外科診療を行うと同時に、奈良県内において、現時点の国内外で最も進んだレベルの治療を高い技で行うよう努めています。そのような治療が、遠く離れた病院に行かなくても皆様のお近くにある奈良県総合医療センターで受けられることをぜひ知っていただきたいと思っております。

肝臓、胆のう、膵臓がんに対する手術

(1)診療体制と実績

当診療科には、外科学会専門医・指導医、消化器外科学会専門医・指導医の資格はもとより、更に高度な専門医資格として日本肝胆膵外科学会高度技能指導医・専門医を取得した肝臓、胆のう胆管、膵臓がんに対する手術を専門とする医師が常勤医として在籍しており、肝臓、胆のう、膵臓がんに対する高度で安全な外科治療を行っております。肝臓、膵臓、胆道領域の高難度手術の多くの診療実績を有する施設として、日本肝胆膵外科学会専門医修練施設Aに指定されています。2022年の1年間における手術件数は膵臓切除81例、肝切除71例であり、近畿圏内でも有数のhigh volume centerの一つとなっております。膵臓がん切除件数は全国のトップ30に入る実績です。腹腔鏡手術、ロボット手術をはじめとする手術における患者さんへの負担軽減にも専門的に取り組んでおり、肝臓、胆のう、膵臓がんを専門とする複数の日本内視鏡外科学会技術認定医が常勤医として在籍して診療に従事しております。

(2)ロボット手術への取り組み

当診療科は、全国的にみても数少ない手術支援ロボットダビンチを用いた肝臓、胆のう、膵臓領域手術の専門施設の一つです。患者さんの身体的負担軽減と手術操作の精密化を目的とし、国内でわずかな専門施設でしか実施されていなかったロボット支援膵頭十二指腸切除を2019年から自由診療で導入しました。その後の診療実績により、2020年には全国で約10施設の高度専門施設とともに国内初、近畿圏では唯一の健康保険適応下での実施施設として認定されました。またさらに実施施設の限られていたロボット支援肝切除も2020年から自由診療で導入、2022年の健康保険適応時に、全国の約10施設とともに国内で最初、近畿で唯一の保険適応下での実施施設として認定されております。2023年の年初の時点で、ロボット膵頭十二指腸切除は50例、ロボット膵体尾部切除は32例、ロボット肝切除はより難易度の高い区域切除以上を中心に16例施行しており、この領域のロボット手術では全国でも屈指の手術経験を有しております。これらの診療実績に基づき、日本肝胆膵外科学会・日本内視鏡外科学会の指定するロボット支援下膵臓手術、肝臓手術(区域切除以上を含む)のプロクター(指導者)の施設となり、他施設を指導する役割も担っております。ロボット膵臓手術のプロクター所属施設は認定された2020年9月の時点で全国で10施設のみ(近畿圏では唯一)、肝臓手術は認定された2022年6月時点で10施設のみ(うち区域切除以上を含む施設は2施設のみ)でした。

(3)高度進行膵臓がん、胆管胆のうがん、肝臓がんに対する手術

また、膵臓がん、胆管胆のうがん、肝臓がんは、進行しやすく重要な血管に巻き付いて手術ができなくなってしまうことの多いがんとして知られていますが、当診療科は、膵臓がん、胆管胆のうがん、肝臓がんに対し、腫瘍に侵された血管ごと腫瘍を切除して血管吻合でつなぎなおす血管合併切除再建手術の多くの経験と技術を有している特徴があります。通常では切除できないがんを様々な血管合併切除再建の技術を駆使して取り除く手術を行っております。特に膵臓がんでは、門脈という血管への浸潤については、専門施設であれば合併切除再建を行っていますが、肝動脈という再建がより困難な血管が侵されている場合は切除を断念することが多いのが現状です。当科では、近年発達した術前の化学療法や放射線療法の組み合わせによって、腫瘍の勢いを抑えたのちに、肝動脈の合併切除と血管吻合による再建を脳外科手術等で用いる手術用顕微鏡を使って行う技術を有しており、このような手術により、切除不能であった患者さんが長期に元気に生きながらえることが増えてきております。あきらめないで是非ご相談ください。

(4)肝臓がんに対する手術

肝臓がん、肝内胆管がん、転移性肝がん等にたいする肝切除手術については、上記のロボット手術を含む腹腔鏡下手術による患者さんへの身体的負担軽減に努めております。大型腫瘍や血管浸潤例以外では、多くの患者さんで腹腔鏡下手術を行って、手術後の痛みや負担の軽減を計っております。肝臓手術は他の領域の消化器外科手術と異なる点が多く高い専門性を要求されますが、1000例以上の肝切除経験を有する医師を含むこの領域を専門とする外科医が多数そろっているのが当科の特徴です。

(5)胆嚢・胆管がんに対する手術

胆のうがん、胆管がんは、がんの進展範囲により、膵頭十二指腸切除が必要な場合、肝切除が必要な場合、その両者が必要な場合があります。切除で完全治癒を目指すには、複雑な臓器血管構造への深い理解とともに肝臓領域、膵臓領域の両方の手術における高度な知識と技術が要求されますが、当科では肝胆膵領域に幅広い経験を有する外科医が複数在籍しており、それに応えうる診療体制を有しています。胆のうがん、胆管がんに対しても、術前術後の化学療法、放射線療法、近年発達した分子標的薬も組み合わせた治療を行うことで、発見時に切除不能の状態の患者さんを根治切除に持ち込めることも増えてきております。また、当科の特徴である、血管合併切除・再建する技術を駆使した手術を数多く行なっています。当院はがんゲノム医療連携病院であり、この領域のがんで近年注目されてきているがん遺伝子のパネル検査を行う体制を院内で有しており、がんゲノム医療の恩恵を受ける患者さんが出てきております。

(6)膵胆管合流異常症、胆道拡張症に対するロボット手術

また、膵胆管合流異常症、胆道拡張症は、比較的若年の患者さんが手術の対象になることが多く、身体的な負担や手術後の痛み軽減に加え、手術の傷を最小限にして整容性に優れる腹腔鏡下手術、その中でも近年では特に手術支援ロボットを用いた手術を2020年から全国的にも先駆けて開始し、2022年からは国内の先進的数施設とともに全国的にも数少ない健康保険適応での実施施設に認定されました。同手術については日本肝胆膵外科学会・日本内視鏡外科学会の指定するプロクター(2022年6月の指定時点では全国で3名のみでした)の在籍施設となっております。創部の痛みの少なさ、整容性から特に若年の患者さんからは大変喜んでいただいております。

食道がんに対する手術

食道がんの手術は操作が頸部・胸部・腹部に及ぶため、非常に侵襲が大きく、術後に集中治療を要します。当院では、一般の病院で施行することが困難な食道がんの手術をこれまでに多数行なっており、専門の外科医が長年にわたる経験を生かし診療に当たっています。最近では、胸腔鏡、腹腔鏡を用いた手術を行い、術後合併症の低減に取り組んでいます。また、遠隔転移や多発転移を有する患者さん、併存疾患により手術が困難な患者さんに対しては、積極的に化学療法や放射線療法を行い、治療成績の向上に努めています。

胃がんに対する手術

長年にわたる信頼を得て多数の患者さんを地域の先生方からご紹介いただいております。低侵襲を目指した腹腔鏡手術を積極的に行なっております。最近では、ロボット支援下手術も導入し高度で安全な医療が提供できるよう取り組んでいます。また、遠隔転移や多発転移を有する患者さんに対しては、積極的に化学療法を行い、生存期間の延長に努めています。当院は日本胃癌学会認定施設(施B023-107)として認定されています。

大腸がんに対する手術

この領域の手術は、消化器外科かつ大腸肛門病の専門医が主として担当しております。従来人工肛門となることも多かった直腸がんの手術では、新たな手術法により、多くの患者さんで人工肛門を回避しつつ根治的な切除を行うことができるようになっております。近年、抗がん剤による治療が進歩しており、当センターでも分子標的薬を含めた最新の治療を行っておりますが、大腸がんは、積極的な外科切除が治癒につながりやすいがんであり、転移を有する患者さんに対しても切除が可能な場合は転移巣を含めた切除を積極的に行って治癒を目指しております。その成果は国際学会でも紹介されております。また、内視鏡外科の技術認定を受けた専門の医師を中心に、体への侵襲軽減を目指した腹腔鏡下手術にも積極的に取り組んでおります。大腸がんの臓器転移として最も多い肝臓転移に関しては、外科切除で完治が得られることが少なくありません。当センターでは、肝臓外科の専門医を有しており、他院では治癒を断念して抗がん剤治療とされた患者さんに対しても、肝切除による治療を精密かつ安全に施行して多くの患者さんが助かっておられます。国内外の他施設と比較しても非常に良好な生存率を達成しております。

※個々の外科疾患、手術等の詳細については上段横の「▶治療について」をクリックしてご覧ください。

当科におけるロボット支援下消化器外科手術

奈良県総合医療センターに手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」が導入されて以来、消化器外科手術においてもロボット支援下手術に積極的に取り組んで参りました。2017年11月に胃がんに対して初めてロボット支援下手術を開始し、その後に直腸がん、膵腫瘍、肝がん、総胆管拡張症、結腸がんに対してもロボット支援下手術を施行しております。当初はいずれの手術も保険適応ではなく自由診療として行っておりましたが、一定数を施行したことにより当センターでは通常の保険診療にて受けていただくことがほぼ可能となってきております。さらに現在、当科にはロボット支援下手術の術者資格取得医師が5名以上在籍し、そのメリットをいかしたロボット支援下手術は増加傾向を示しており、今後も積極的にロボット支援下手術に取り組んでいきます。

消化器外科におけるロボット支援下手術

手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」とは

ダ・ヴィンチとは1990年代にアメリカで開発された手術支援ロボットです。世界では産婦人科の子宮摘出、泌尿器科の前立腺摘出で多くの手術が施行され、消化器領域でも食道、胃、直腸、結腸、肝臓、膵臓などの臓器で手術が行われています。
日本では2012年4月に前立腺がん摘出術、2017年4月に腎臓がん摘出術が保険適応となり、当センターでも泌尿器科の日常一般診療として現在までに数百名の患者さんにダ・ヴィンチを用いた手術が行われています。
2018年4月には泌尿器科以外にも消化器外科、胸部外科、産婦人科領域など新たに12件の術式に対して保険が適用されました。消化器外科では食道がん摘出術、胃がん摘出術、直腸がん摘出術が保険適応となり、当センターでは2017年11月から胃がん、2018年2月から直腸がんの患者さんを対象にロボット支援下手術を開始しております。2020年4月には膵腫瘍摘出術が保険適応に、2022年4月には総胆管拡張症、肝がん摘出術、結腸がん摘出術も保険適応となり、当センターでもその患者さんを対象にロボット支援下手術を開始しております。

手術の概要

ロボット支援手術といっても、ロボットが外科医の代わりに手術を行うわけではありません。術者がコンソールと呼ばれる場所から手術操作を行うための器具(鉗子)を遠隔操作で動かして手術を進行するための道具です。術者の手で操作した動きがロボットの指先に忠実に伝わって動く仕組みになっています。あくまで低侵襲手術である腹腔鏡手術の一種で外科医が手術を行います。コンソールは同じ手術室内にありますが、通常の手術と同様に複数の助手、看護師が患者さんのベットサイドで協調して手術を行います。

ダ・ヴィンチの特長

  1. ロボットによる通常の腹腔鏡手術では困難な精緻な動き
    ダ・ヴィンチは7つの関節を持ち、さらには人間の手の関節を超えた自由度があるため、組織を持つ、切るなどの角度を適切に調節したり、縫合(針糸で縫う)や結紮(糸で縛る)といった関節がない従来の腹腔鏡手術で使用する器具(鉗子)では困難な狭い空間内での複雑な操作も行うことができます。
  2. 高解像度3Dモニターによる鮮明な画像
    三次元(3D)モニターおよびズーム機能により、肉眼では見えないような微小血管や神経などが立体的に見え、安全で精度の高い手術を行うことが可能です。
  3. コンピュータ制御による安全性
    コンピュータ制御より術者の手ぶれを排除し、コンソールでの術者の手の動きに対して手術台での鉗子の動きを2:1や3:1に調節することにより、安全で精度の高い手術を行うことが可能です。

ダ・ヴィンチの有用性

これらのロボットの特長を活用することにより、胃がん手術では脂肪組織と見分けにくい膵臓を傷つけることを防ぎ、直腸がん手術では残すべき骨盤内の神経をしっかり確認・温存することができます。その結果、胃がん手術で問題となる膵液漏(膵臓が傷ついて術後に膵液が漏れる)や、直腸がん手術で問題となる排尿障害(術後に尿がでにくい)や性機能障害(男性で勃起・射精ができない)を従来の手術よりも減らすことが期待されます。実際当科では、直腸がん手術では従来の腹腔鏡手術よりもロボット支援下手術のほうが術後合併症が少なく、その結果術後の入院日数も減少しております。

*ロボット支援下手術についてはいつでもご相談に応じておりますので、お気軽にお問合せください。
肝臓胆のう膵臓担当医;高、胃担当医;右田、大腸担当医:中川、井上

治療についての項もご覧下さい

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