小児泌尿器科 
-治療について-

小児泌尿器科で扱う主な疾患の説明

停留精巣

お母さんのおなかにいる胎児期に、精巣は腹部から陰嚢に降りてきます。それが途中で止まり、片側(もしくは両側)の精巣が陰嚢内まで降りてこない状態をいいます。この疾患の問題点としては、1)将来の精巣の機能障害(とくに精子形成能について)がおこること、2)精巣腫瘍の発生率が正常に下降した精巣と比べて高いこと、などがあります。6ヶ月までは自然に降りてくる可能性がありますが、それ以降では自然下降は期待できず、精巣を陰嚢内に下降させる手術(精巣固定術)を行う必要があります。当科では、腹腔内に停留した精巣に対する腹腔鏡手術も行っています。

陰嚢水腫(陰嚢水瘤、精索水瘤)

精巣の周囲に水がたまる病気です。鼠径ヘルニア(脱腸)と同じで、腹膜と精巣を包む膜との間の通路(腹膜鞘状突起)が閉じずに開いたままとなっていることが原因です。自然閉鎖を期待して経過をみますが、改善しない場合は手術治療を行うこともあります。

尿道下裂

尿の出口(外尿道口)が、陰茎の先端ではなく陰茎の途中や根元に開口している状態のことをいい、胎児期での男性ホルモンの分泌異常や組織反応の異常に原因があるといわれています。陰茎そのものも下方へ屈曲するのが特徴です。このような形態の異常から、1)陰茎の屈曲のために勃起障害が起こり、2)立位での排尿が困難となる、3)性的コンプレックスの原因となる、などの問題点があります。自然に治ることはなく、修復術が必要となります。

包茎、埋没陰茎

子供は亀頭部分が包皮で被われていますが、年齢とともに自然に亀頭部が露出されてきます。しかし、包皮炎を繰り返す場合などには、治療が必要となります。当科では最初に包皮をめくる訓練を指導しています(場合によりステロイド含有軟膏を使用)。それでも改善がない場合には手術を行うことがあります。また包茎状態のお子さんの中には陰茎が埋もれたように見える埋没陰茎などの特殊な病態もあります。埋没陰茎のお子さんで排尿状態が悪く(尿がまっすぐ飛ばない)、成長しても亀頭が露出する可能性が低いと考えられる場合は、手術治療を行うことがあります。

膀胱尿管逆流症(VUR)

腎臓で作られた尿は、尿管を通過し、膀胱に貯まり、尿道から排出されます。正常な排尿ではこの流れは一方通行で、尿管から膀胱に入るところ(尿管膀胱移行部)の筋肉の作用により、膀胱に貯まった尿が尿管に逆流しない仕組み(逆流防止機構)が働いています。この逆流防止機構に問題があり、尿が膀胱から尿管や腎臓まで逆流するものを膀胱尿管逆流症(VUR)といいます。腎盂腎炎などの有熱性尿路感染症の原因となり、繰り返す腎臓の炎症によって腎機能が低下します。膀胱尿管逆流症(VUR)は成長とともに自然に消失する可能性もあることから、少量の抗生剤投与により尿路感染予防を行いながら経過観察することが多いですが、尿路感染を繰り返す場合や経過観察でも改善しない場合には逆流防止の手術治療が必要となります。
現在当科で施行している手術治療は1)内視鏡下注入療法 2)開放逆流防止術 3)経膀胱アプローチによる腹腔鏡下逆流防止術の3つです。それぞれに利点欠点があり、患者さんおよびご家族の方に十分な説明を行ったうえで、治療方法を決定しています。また、年長児では便秘との関連が指摘されており、便秘を有する子どもさんに対しては便秘治療も積極的に行っています。

水腎症

腎臓から膀胱までの途中(腎盂尿管移行部、尿管、尿管膀胱移行部)で、尿の流れが悪くなり、腎盂腎杯と呼ばれる腎臓内の尿路が拡張した状態のことをいいます。拡張の程度が強いと腎機能が障害されることがあります。胎児期の超音波検査で発見されることも多く、原因として最も多いものは腎臓と尿管の移行部が狭くなった腎盂尿管移行部狭窄症です。腎盂尿管移行部狭窄症の場合、自然軽快が期待できる場合もあるため経過観察する場合ことが多いですが、水腎症の程度が悪化したり、腎機能が低下する場合には手術治療が必要となるため、定期的な検診が大切です。現在当科で施行している腎盂尿管移行部狭窄症に対する手術治療は、1)開放腎盂形成術 2)腹腔鏡下腎盂形成術 3)ロボット支援腹腔鏡下腎盂形成術の3つです。年齢や体格などに合わせて手術方法を決定しています。
その他に水腎症をきたす原因疾患としては尿管膀胱移行部狭窄、膀胱尿管逆流、尿管瘤、異所開口尿管、後部尿道弁などが挙げられます。原因疾患によっては早急な手術治療を要する場合もあり、迅速で正確な診断が重要になります。

二分脊椎

先天性の脊髄の障害により排尿および排便機能に異常が出る病気です。腎機能保持や排泄に対するケアが重要になります。当科では排尿および排便機能障害に対する内科的および外科的治療をトータルに行っています。生涯にわたる排尿・排便管理が必要となりますが、当科では小児から成人までのすべての年齢層の患者さんをカバーし、排泄管理専門ナースとともに患者さんに寄り添った医療を提供しています。

夜のおねしょ(夜尿症)や昼間のおもらし(昼間尿失禁)

膀胱や尿道の機能的要因、睡眠機構の要因、遺伝的要因、内分泌的要因、精神的要因など原因は様々です。当科ではできるだけ患者さんの負担の少ない検査や治療を中心に行うよう心がけています。

尿道狭窄

小児や成人を問わず先天性および後天性(外傷や手術後などによる)尿道狭窄の治療を行っています。多くの場合は内視鏡治療を行いますが、内視鏡治療で対応できない場合には開放手術を行います。開放手術では口腔粘膜の移植術などの高度な尿道再建術も行っています。

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