臨床工学技術部

臨床工学技術部は、生命維持管理装置を含む特定保守管理医療機器の保守点検業務や操作業務を軸とし、患者さんに安全で質の高い医療の提供をサポートしています。各業務にはリーダースタッフを配置しており、先進的な医療の知識や技術を取り入れチーム医療の一員として他の医療関係者との緊密な連携を図り医療安全の確保に努めています。また若手スタッフには各業務をローテーションすることで基本と多くの知識・技術を早い段階で習得できる体制を整えています。
職場環境を向上させるためスタッフ間の交流、連携を密に図り全員で働きやすい職場づくりを心掛けています。

臨床工学技術部中央管理器材庫

臨床工学技術部中央管理器材庫

集中治療室ME器材庫

集中治療室ME器材庫

手術室ME器材庫

手術室ME器材庫

臨床工学技士とは

1987年5月に制定された「臨床工学技士法」に基づく医学と工学の両面を兼ね備えた国家資格です。
(公布 昭和62年6月2日、施行 昭和63年4月1日)
医師の指示の下に、生命維持管理装置の操作及び保守点検を行う医療機器の専門医療職種であり、医師をはじめ、看護師などと共に医療機器を用いたチーム医療の一員として治療をサポートしています。

業務の紹介

血液浄化業務

■血液浄化治療室
血液浄化治療室では、医師・看護師とともにチームで患者さんの入室から退室まで安全で良質な透析治療が行えるよう日々管理しています。

日常業務として、透析装置使用前点検・プライミング・穿刺・透析開始操作・透析装置使用中点検・バイタルサインチェック・返血操作・止血・ダイアライザ等の物品管理・透析液清浄化管理(ET・生菌測定)などを行っています。また必要に応じて透析装置の消耗品交換などの保守点検を行っています。
特殊血液浄化に関しては、臨床工学技士が中心となり対応しています。

特殊血液浄化一覧

  • 単純血漿交換療法(PE)
  • 二重濾過血漿分離交換療法(DFPP)
  • 血漿吸着療法(LDL-A、PA)
  • 顆粒球除去療法(GCAP)
  • 腹水濾過濃縮再静注法(CART)
  • 直接血液吸着療法(活性炭吸着、PMX-DHP)
  • 末梢血幹細胞採取(PBSCH)

■その他血液浄化
人工呼吸器や補助循環装置が装着されており集中管理を必要とする患者さんの場合は、臨床工学技士の管理のもと集中治療室にてIRRTやCRRTを実施しています。また、必要に応じて各種特殊血液浄化業務も行っています。
感染症などにより血液浄化治療室に出室出来ない患者さんに対しては、病棟透析にも対応しています。

救急・集中治療センター業務

ER、ICU、HCUでは、生命維持管理装置である血液浄化装置・人工呼吸器をはじめとし、ECMO・IABP・IMPELLA・連続心拍出量(CCO)モニタ・高/低体温維持装置などのME機器の操作・保守管理を24時間体制で行っています。

生命維持管理装置を使用している患者さんの移送の際、必要に応じて立ち会い等の対応を行なっています。

また補助循環装置ECMOに関して、準備から導入・搬送・管理・離脱までの流れを関連部署と協力し、シミュレーションを行うことでチーム力向上に努めています。

心臓カテーテル検査室業務

心臓カテーテル検査室では、清潔物品や造影剤自動注入装置の準備、患者入退室時周辺物品の準備、ポリグラフのセッティング、使用デバイスの準備、各種検査機器の操作などの外回り業務を中心に行っています。
主な検査機器としては光干渉断層法(OCT)・血管内超音波診断装置(IVUS)・冠血流予備量比 (FFR)測定のセットアップ、操作を行っており医師と連携して治療を進めていきます。医師とディスカッションを行い、より詳しく治療に関わっていく場合もあります。
またECMO、IABPが必要時には、迅速に準備を行い対応できるようにしています。
カテーテル業務は心臓だけでなく、頸動脈ステント(CAS)にも関わっており、IVUSの操作などを行い、必要時には麻酔器の準備など様々な業務を行います。
カテーテルアブレーション業務では、記録装置や電気刺激装置、3次元マッピング装置(EnSite/CARTOシステム)の操作及び管理を行っています。また、2020年より心房細動や房室結節リエントリー性頻拍に対してクライオコンソールを用いた治療も行っています。

ME機器保守管理業務

ME機器管理ソフトによるバーコード管理によってME機器の中央管理体制の構築を図っています。
臨床工学技術部から貸出された中央管理機器は、病棟で使用後に返却されると使用前点検を実施し、貸出という一連の流れで運用しています。

またME機器に対して、現場ではトラブルシューティングを行い、臨床工学技術部では動作点検、故障修理、定期点検、オーバーホール、廃棄、選定など一貫して保守管理を行っています。

臨床工学技術部対応ME機器一覧

  • 輸液ポンプ・シリンジポンプ
  • パルスオキシメータ
  • 患者監視モニタ
  • 経腸栄養ポンプ
  • DVTポンプ
  • 低圧持続吸引器
  • ネブライザ
  • 高・低体温維持装置
  • 人工呼吸器
  • 閉鎖式保育器
  • 除細動器・AED
  • 心電計
  • 経皮血液ガス分圧測定装置
  • 電気メス
  • 麻酔器
  • その他
 

呼吸管理業務

病棟で人工呼吸器治療中の患者さんに機器が適正に使用されているか、各病棟を巡回し毎日点検を行います。患者さんの状態と人工呼吸器の換気条件の双方から確認し、医師と連携をとりながら管理しています。
非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)の導入も増加しているため、マスクフィッティングから離脱後滅菌までのマスクの管理も行います。
これらの人工呼吸器の導入から使用後までを管理し、次回使用のための安全の確保も行います。

■一酸化窒素吸入療法
新生児集中治療室(NICU)で、新生児の肺高血圧症をともなう重症呼吸不全の呼吸管理に対する治療として一酸化窒素(NO)吸入療法を行っています。
また、集中治療室では心臓周術期に対する保険適応拡大から成人心臓血管手術患者に対するNO吸入療法にも対応しています。
臨床工学技士はNO吸入装置の使用前点検、導入、使用後点検まで行っています。

CIEDs関連業務

植え込み型心臓電子機器(CIEDs)を使用されている患者さんは現在とても多くおられます。当センターでは、新規植え込み手術の対応、デバイス外来、手術時の設定変更など院内におけるすべてのCIEDs関連業務にCEが関わっています。
設定変更が必要なデバイスの異常が見受けられた場合には医師と連携し適切な設定が行えるように心がけています。
またデバイス植え込み患者さんの緊急搬送時にも迅速に対応が出来るような環境を整え、24時間体制で緊急のチェックなども行います。

手術室業務

手術室に臨床工学技士が常駐し、各手術室の使用前点検を行っています。麻酔器開始前点検や無影灯、手術台の動作点検に加え、電流容量や漏れ電流値など周辺環境の整備も行っています。
様々な医療機器の故障やトラブル時は迅速に対応し、手術が滞りなく終わることを常に心がけています。

また各科からの依頼を受け、以下の業務支援を行っています。

■手術支援ロボット『 da Vinci 』業務
臨床工学技士もチームの一員として携わっており、セットアップ、ロールイン、ロールアウト、トラブル対応などを行っています。

対応診療科
泌尿器科,小児泌尿器科,産婦人科,消化器・肝胆膵外科,呼吸器外科,小児外科

対応術式一覧

  • RALP:ロボット支援下前立腺摘出術
  • RAPN:ロボット支援下腎部分切除術
  • RALP:ロボット支援下腎盂形成術
  • RARC:ロボット支援下膀胱全摘出術
  • RLAR:ロボット支援下直腸低位前方切除術
  • RADG:ロボット支援下胃幽門側切除術
  • RALR:ロボット支援下肝切除術
  • RAPD:ロボット支援下膵頭・十二指腸切除術
  • RADP:ロボット支援下膵体尾部切除術
  • RATLH:ロボット支援下子宮全摘出術
  • RATS:ロボット支援下胸腔手術

■眼科支援業務
白内障手術や硝子体手術、緑内障手術などに対して眼科手術機器のセッティング、操作介助などを行い、臨床工学技士もチームの一員として携わっています。
また白内障手術はレーザー白内障手術もおこなっており、フェムトセカンドレーザーの操作介助も行っています。

■心臓血管外科関連業務
心臓血管外科関連業務として、腹部大動脈人工血管置換術・ステントグラフト内挿術・経カテーテル大動脈弁植え込み術(TAVI)・下肢静脈瘤血管内レーザー治療などに対応しています。
また人工心肺を用いた開心術に対しては、体外循環技術認定士を中心としたチームで人工心肺装置の操作・管理を行っています。

■麻酔アシスタント業務
医師のタスクシェア業務の一環として2023年度から院内研修が開始されました。研修の最終段階では筆記・口頭・実技試験が実施され、合格者は病院長から高度医療技術取得者として認定(院内認定)されます。
業務内容は、挿管物品準備および点検、カテーテル挿入介助、手術麻酔記録の代行入力、動脈ラインからの採血測定および報告、患者退室と搬送補助など多岐にわたります。
麻酔科医による指導のもと業務に従事し、その一部を臨床工学技士が担うことで、より安全で質の高い麻酔業務に貢献できるよう努めています。

その他

■医療安全研修
新人職員、中途採用職員、各病棟/センタースタッフ向けに「ME機器」関連の勉強会を定期的に開催しています。対象は医師や看護師だけでなく他のコメディカルなど幅広く行っています。
また、部内勉強会も積極的に行い、日々研鑽に努めています。

実績(業務実績・講演/発表/著書 等)

主な対応業務実績(2023年度)

ME機器保守管理業務 CE部 対応ME機器 【機種】 63
CE部 中央管理機器総台数 【台】 2728
ME機器メンテナンス対応件数 【件】 1918
CE対応 【件】 1840
メーカー修理対応 【件】 78
CE対応比率 【%】 95.9
血液浄化業務(血液浄化治療室) 維持透析治療(HD/HDF/ECUM/6E HD) 【件】 1671
特殊血液浄化(PE/GCAP/LCAP/CART) 【件】 45
末梢血幹細胞採取(PBSCH) 【件】 23
救急・集中治療センター業務 急性血液浄化(IRRT/CRRT) 【件】 515(112/403)
特殊血液浄化 【件】 33
IABP 【件数/管理日数】 25/131
VA-ECMO 【件数/管理日数】 69/243
VV-ECMO 【件数/管理日数】 3/18
Impella 【件数/管理日数】 11/89
循環器関連業務 心臓カテーテル検査(CAG/PCI) 【件】 457(169/288)
イメージング装置(IVUS/OCT/FFR) 【件】 339(149/163/27)
EVT 【件】 51
CAS 【件】 27
カテーテルアブレーション 【件】 193
ペースメーカ関連(外来含む) 【件】 851
手術室業務 ペースメーカ植込み手術 【件】 94
ロボット支援手術(da Vinci) 【件】 273
眼科手術 【件】 785
MEP 【件】 63
EVLT(下肢静脈瘤) 【件】 14
ステントグラフト(EVAR/TEVAR) 【件】 51(37/14)
人工心肺 【件】 110
自己血回収装置 【件】 144
TAVI 【件】 23
麻酔器使用前点検 【件】 2132
手術室ME機器保守管理 【件】 229
RFA 【件】 43

講演/一般演題/執筆 等(2023.01.01~2023.12.31)

■講演

  • 木村優友:ECMO管理について.テルモECMOグループミーティング(web)
  • 木村優友:V-A、V-V ECMOについて.テルモECMOグループミーティング(web)
  • 松田翔希:OCT guide PCI.奈良県臨床工学技士会 循環器部門研修会(web)
  • 松田翔希:EVTを学んでみない?デバイス編.近畿心血管ジョイントライブ2023(大阪市)
  • 松田翔希:OCT guide PCIにおけるCEの役割.アボットジャパンOCT Co-medical Training(生駒郡)

■シンポジウム・ほか

  • 松田翔希:デバイス編.How LIVE?(web)
  • 松田翔希:RMSを安全に行なうためにCEができること.第29回近畿臨床工学会(姫路市)

■一般演題

  • 荻田祐 ・ほか:当センターにおける遠心分離型血漿交換の施行経験.第41回アフェレシス学会関西地方会(奈良市)
  • 荻田祐 ・ほか:心房細動2nd sessionの心房頻拍に対してCARTO3を用いてgap伝導路が同定できた1例.第33回日本臨床工学会(広島市)
  • 松田翔希・ほか:当センターにおけるHF-OCTの使用経験.日本心血管インターベンション治療学会近畿地方会(豊中市)
  • 松田翔希・ほか:当センターにおけるOFDIを用いたcarpet viewの評価方法と有用性の報告.第29回近畿臨床工学会(姫路市)
  • 松田翔希・ほか:A型急性大動脈解離術後の上大静脈症候群に対しV-A ECMOからVV-A ECMOに移行した一例.第33回日本臨床工学会(広島市)
  • 鷹野弘典・ほか:加温加湿器MR850のアラーム対応を経験して.第61回全国自治体病院学会(札幌市)
  • 楓井翔己・ほか:人工心肺中の酸素加不良トラブルにECMO回路を使用した症例.第33回日本臨床工学会(広島市)

■著書

  • 亀井理生:呼吸ECMOおたすけハンドブック.大下慎一郎 編著:72-73,メディカ出版 2023
  • 楠本奈央:呼吸ECMOおたすけハンドブック.大下慎一郎 編著:70-71,メディカ出版 2023

スタッフ構成

部長 安宅 一晃(救急・集中治療センター長 兼任)
副技師長 亀井 理生
係長 1名
副主任主査 3名
主査 6名
主任技師 5名
技師 9名

認定資格

透析技術認定士 8名
3学会合同呼吸療法認定士 9名
体外循環技術認定士 6名
呼吸治療関連専門臨床工学技士 1名
不整脈治療関連専門臨床工学技士 2名
心・血管カテーテル関連専門臨床工学技士 1名
CDR(PM/ICD関連情報担当者)認定 1名
認定集中治療関連臨床工学技士 3名
心血管インターベンション技師(ITE)認定 5名
臨床ME専門認定士 3名

※2024.05現在

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