糖尿病・内分泌内科

特徴

糖尿病内分泌内科では、甲状腺疾患、骨粗しょう症をはじめとする内分泌代謝疾患や、糖尿病(1型糖尿病・2型糖尿病・妊娠糖尿病・その他の糖尿病)の診療を担当しております。

 

内分泌疾患については外来診療を中心として、先述の疾患以外に下垂体・副甲状腺・膵内分泌腫瘍・副腎・性腺・更年期障害・脂質異常症・肥満症に至るまで全分野をカバーしております。甲状腺疾患や骨粗しょう症は圧倒的に女性に多い疾患です。また、女性では妊娠・周産期や周閉経期においてホルモン動態は劇的に変化します。糖尿病内分泌内科は思春期から高齢期に至るまで、女性の生涯に寄り添える診療科でありたいと考えています。

内分泌疾患はその性質上、脳神経外科、耳鼻咽喉科、泌尿器科、産婦人科の先生方との連携が不可欠で、特にクッシング病・原発性アルドステロン症・膵内分泌腫瘍では当院が誇る放射線科IVRチームの協力なくして確定診断はあり得ません。外来や入院で内分泌負荷試験を行い、病態と治療方針をきめ細やかに評価したうえで、各科の先生方と協力しながら治療に取り組んでおります。救命救急センターと連携しながら副腎クリーゼ、甲状腺クリーゼ、高カルシウム血症クリーゼ、褐色細胞腫クリーゼなど重篤な救急疾患にも随時対応しております。
小児科からの移行期医療、すなわちトランジションが各診療分野で問題となっておりますが、その中で内分泌疾患が一番大きなウェイトを占めています。当科では院内・院外問わず小児科からのトランジションにも積極的に取り組んでおります。

奈良県総合医療センターの糖尿病内分泌内科と消化器内科は、日本内分泌学会から認定教育施設、すなわち内分泌専門医を育成することができる施設として承認されています。全国的に見ても奈良県は内分泌専門医が非常に不足しており、これを少しでも解消すべく当科では奈良県立医科大学糖尿病内分泌内科の力添えを得ながら、内分泌専門医の育成に尽力いたします。自己研鑽の一環として県内他施設との交流も盛んに行っております。奈良県立医科大学を中心として近畿大学奈良病院、天理よろづ相談所病院の4施設で定期的に勉強会を開催しており、奈良県全体の内分泌診療のレベルアップにも貢献しております。

 

食餌や生活習慣の欧米化に伴い、糖尿病患者さんは年々増加の一途をたどっており、最近の統計では糖尿病患者は約1000万人、糖尿病の可能性を否定できない患者さんは2000万人以上にのぼるといわれています。当施設は奈良県北和地区における中核病院の一つとして糖尿病診療にも取り組んでおります。当施設には糖尿病療養指導士(CDEJ)の資格を持った医療スタッフが数多く在籍しており、皆で糖尿病サポートチーム(DST)を結成しております。糖尿病診療には血糖コントロールだけではなく、テーラーメイド化が求められています。われわれDSTは患者さんにじっくりと寄り添って一人一人にあった生活習慣指導や食餌療法、運動療法を提供してまいります。
当施設は「地域医療を支える7つの柱」の一つに「糖尿病治療」と「周産期医療の充実」を掲げております。地域連携を強化しながらも血糖コントロールが悪化した場合は随時当科で治療を行っておりますし、糖尿病性ケトアシドーシス、重症感染症を伴う糖尿病など極めて重篤な状態の患者さんも救命センターと連携しながら24時間受け入れを行っております。当施設は妊娠糖尿病や糖尿病合併の妊婦さんも数多く紹介を受けています。DSTには産婦人科医、助産師も在籍しており、チーム一丸となって周産期の糖尿病管理も担当いたします。また、当科は院内他科からも数多く紹介を受けており、周術期やステロイド糖尿病の血糖コントロールにも随時対応しております。

奈良県総合医療センターの糖尿病内分泌内科と消化器内科は、日本糖尿病学会から認定教育施設として承認されています。奈良県立医科大学糖尿病内分泌内科の力添えを得ながら、糖尿病専門医の育成に尽力いたします。

外来担当表

月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日
1診 和田【午後】 上嶋 古家【午後】
河邉【午前】
出口【午後】
外来受付:午前8時30分~午前11時00分まで(予約、急患を除く)

糖尿病

糖尿病に対する全人的な診療をめざしており、糖尿病教室、インスリン導入入院、糖尿病教育入院、外来インスリン導入などに積極的に取り組んでいます。糖尿病教育入院・インスリン導入入院は、患者さんの希望に合わせて5日間、10日間のコースを用意しております。
糖尿病の内訳としては2型糖尿病が圧倒的多数ですが、1型糖尿病、妊娠糖尿病&糖尿病合併妊娠、二次性糖尿病の診療も行っております。奈良県総合医療センターの特徴としては、癌治療に関連した糖尿病、膵腫瘍摘出後に発症した膵性糖尿病、ステロイド糖尿病、救急で来院された重篤な糖尿病、などが多数経験されることが挙げられます。

なお、栄養管理部では糖尿病栄養指導・連携パスとして「当センター登録医」の医療機関に通院中の糖尿病患者さんが、食事療法のための栄養指導を当センターの管理栄養士から受けていただくことのできるシステムを運用しております。

糖尿病サポートチーム(DST)

DST集合写真

糖尿病専門医・特定行為看護師・糖尿病療養指導士(CDEJ)CDEなら、の有資格者を中心として、医師、看護師、管理栄養士、薬剤師、検査技師、理学療法士が糖尿病サポートチーム(DST)を結成しています。DSTスタッフは糖尿病教室、インスリン導入入院、糖尿病教育入院、外来インスリン導入などにおいて大変重要な役割を果たしています。

糖尿病教室は各職種のスタッフがそれぞれのテーマを設けて、講義形式だけではなく時には患者参加型の形式をとり、積極的に知識を習得できるように努めています。
また、院外の糖尿病啓発イベントにも積極的に参加しています。

2020年3月から20239月まで、新型コロナウイルス流行により糖尿病教室が開催できませんでした。そんな中でもDSTは新たに「糖尿病サポートチーム通信」を作成し、DSTメンバーが交代で2ヵ月に1回発行し、院内にも掲示・配布することで患者さんへの情報提供に努めました。

バックナンバー
「糖尿病サポートチーム通信」第7号
「糖尿病サポートチーム通信」第6号
「糖尿病サポートチーム通信」第5号
「糖尿病サポートチーム通信」第4号
「糖尿病サポートチーム通信」第3号
「糖尿病サポートチーム通信」第2号
「糖尿病サポートチーム通信」第1号

糖尿病栄養指導・地域連携パス

当センター登録医の先生方へ

糖尿病栄養指導・地域連携パスについて

この連携パスは「当センター登録医」の医療機関に通院中の糖尿病患者さんが、食事療法のための栄養指導をセンターの管理栄養士から受けていただくことのできるシステムです。下記の内容をご確認の上、ぜひご利用ください。

糖尿病栄養指導の実施日時・内容

栄養指導は2回に分けて行います。(予約制)

初 回 2回目(初回からおよそ6週間後)
13:30 内科医師の診察 血液検査
13:40 栄養指導 栄養指導

申込方法

紹介元登録医

【栄養指導依頼】
「診療情報提供書」(PDFファイル)に必要事項をご記入の上、FAXで送信してください。
FAX.0742-46-7666(地域医療連携室)
TEL.0742-46-6001
「食事記録表」(PDF)必要時に患者さんにお渡しください。

地域医療連携室

当センターで予約日を決定の上、①「紹介患者予約通知書」をFAXで返信します。

患者さん

予約当日、1階総合カウンターへ直接お越しいただき、①初診・紹介受付へ「紹介患者予約通知書」を提出してください。

内分泌疾患

成長障害、甲状腺疾患、骨粗しょう症などをはじめ、下垂体・副甲状腺・膵内分泌腫瘍・副腎・性腺・更年期障害・脂質異常症・肥満症に至るまで幅広く対応しております。必要に応じて負荷試験などを行い、他科(耳鼻咽喉科、泌尿器科、脳神経外科など)とも十分な連携をとりながら最適な治療を提供するよう努めていきます。

<対象疾患>

  • 甲状腺疾患(バセドウ病、橋本病、亜急性甲状腺炎、甲状腺腫瘍など)
  • 骨粗しょう症
  • 視床下部・下垂体疾患(先端巨大症、プロラクチノーマ、尿崩症、クッシング病、汎下垂体機能低下症、成人成長ホルモン分泌不全症)
  • 副甲状腺疾患(副甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能低下症)
  • 膵内分泌腫瘍(インスリノーマ、ガストリノーマ)
  • 副腎疾患(原発性アルドステロン症、クッシング症候群、副腎不全、褐色細胞腫)
  • 性腺疾患(中枢性無月経、性腺機能低下症、思春期早発症、多のう胞性卵胞症候群)
  • 更年期障害
  • 脂質異常症(家族性高コレステロール血症、家族性Ⅳ型高脂血症)
  • その他の代謝異常

<甲状腺疾患>

甲状腺ホルモンは、細胞のエネルギー代謝回転を調節したり臓器の働きをサポートしたりといった具合に、生命維持に非常に重要なホルモンです。ですので、甲状腺ホルモンが高くなっても低くなっても体に異常をきたします。甲状腺ホルモンが高くなると心臓がドキドキする、汗が多くなる、手がふるえる、体重が減る、といった症状が出ます。これを甲状腺機能亢進症といいます。逆に甲状腺ホルモンが低くなると寒がりになる、体にむくみが来る、眠気が続く、便秘がちになる、といった症状が出ます。これを甲状腺機能低下症といいます。

1.バセドウ病
甲状腺機能亢進症をきたす代表的な病気で女性に多く、発症には免疫が関係していると言われています。甲状腺刺激ホルモン受容体抗体(TRAb)という物質が甲状腺を常に刺激してしまうことで甲状腺ホルモンが過剰に作られてしまうのが主な原因です。抗甲状腺薬での治療が中心ですが、治療困難なケースではアイソトープ治療や甲状腺摘出術も行われます。
(当センターではアイソトープ治療は実施していませんので、必要なケースでは他の医療機関に紹介をしております。)
2.慢性甲状腺炎(橋本病)
甲状腺機能低下症をきたす代表的な疾患です。女性の約30人に1人がこの病気だといわれています。発症には免疫が関係していると考えられており、甲状腺細胞に対する自己抗体が甲状腺をじわじわと攻撃することにより甲状腺機能低下症をきたします。甲状腺機能低下のある方は甲状腺ホルモンの内服により治療をしますが、機能低下のない方は特に何もせず経過をみます。
また、この病気では甲状腺の破壊スピードが早くなると一過性に甲状腺機能亢進症を起こしてしまうことがあります。これを無痛性甲状腺炎といい、バセドウ病との見極めが必要なことがあります。
3.亜急性甲状腺炎
痛みを伴う甲状腺腫大をきたし、30~40歳代の女性に多い病気です。
亜急性甲状腺炎はウイルスが原因ではないかとも言われていますが、はっきりしません。甲状腺に起こった炎症により甲状腺組織が破壊され、その結果甲状腺ホルモンが血中に流れ出してしまい、甲状腺機能亢進症や発熱を起こします。治療は非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を使用しますが、症状が強い場合はステロイドを使用します。

<骨粗しょう症>

骨密度や骨質が低下することで骨がもろくなってしまう状態を骨粗しょう症といいます。骨粗しょう症の患者さんは全国で約1300万人、65歳女性では2人に1人がこの病気だとされ、高齢化社会が進んでいる日本では、患者数は更に増加すると考えられます。しかし実際に治療を受けているのは4分の1にも満たないのが現状です。
骨粗しょう症というと、整形外科で治療を受けるイメージをお持ちかもしれません。実際、背骨が圧迫骨折を起こし腰痛を自覚してからはじめて整形外科を受診されているのが現状です。しかし、骨粗しょう症の発症には各種のホルモンが深く関わっていること、糖尿病や慢性腎臓病(CKD)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)といった生活習慣病とも密接に関連していることから「内分泌代謝内科」が診察する重要な担当疾患の一つです。
骨粗しょう症では背骨の骨折(椎体骨折)や太ももの付根の骨折(大腿骨近位部骨折)を予防し、生活の質(QOL)を保つことが重要です。すでに椎体骨折や大腿骨近位部骨折を起こした方は他の部分の骨折を起こす確率が数倍以上であることがわかっており(骨折連鎖)、治療により骨折連鎖を予防することも非常に重要です。
また、骨粗しょう症は動脈硬化を強力に進めることもわかっており、その危険度は喫煙に匹敵、あるいはそれ以上であるとされています。
骨粗しょう症治療は内科と整形外科で何ら変わりはありません。近年有効なお薬がいくつも発売されており、さらに新しい治療薬もどんどん開発されてきています。どの薬剤を使用するかは骨粗しょう症の程度、年齢、性別、基礎疾患などを考えて個別に判断しています。

<視床下部・下垂体疾患>

視床下部下垂体は生命の中枢であり、あらゆるホルモンの司令塔でもあります。視床下部・下垂体の疾患は複数のホルモン異常を来します。ですので、下垂体疾患の治療はすべてのホルモンの関する知識を総動員して治療に当たらなければなりません。

1.先端巨大症
下垂体腫瘍から成長ホルモン(GH)が過剰に産生されることでひきおこされる疾患です。指が太くなる、鼻や口唇が大きくなる等の顔貌の変化、足のサイズが大きくなる、などの症状が現れます。内科的には糖尿病・睡眠時無呼吸症候群・癌の発生率が上昇する、などの問題があります。治療は手術による腫瘍摘出ですが、摘出し切れなかった症例ではガンマナイフや薬物療法(ソマトスタチンアナログ・ドーパミン作動薬)が行われます。
2.プロラクチノーマ
下垂体腫瘍からプロラクチン(PRL)が過剰に産生されることでひきおこされる疾患です。女性では無月経・乳汁分泌、男性では性欲低下、といった症状が出現します。治療は薬物療法(ドーパミン作動薬)が中心ですが、腫瘍による圧迫症状のある時には手術が行われます。
3.クッシング病
クッシング症候群のうち、下垂体腫瘍が原因のものを特にクッシング病と呼びます。下垂体腫瘍から副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が過剰に産生され、これがコルチゾールの過剰産生を誘導し、クッシング症候群をひき起こします。治療は手術による腫瘍摘出ですが、腫瘍残存症例ではガンマナイフや内服治療(メチラポン・オシロドロスタット)、ソマトスタチンアナログ(パシレオチド)が使用されます。
4.下垂体機能低下症
下垂体機能低下症の多くは、下垂体腫瘍・視床下部腫瘍手術後に伴う続発性です。その他、リンパ球性下垂体炎、IgG4関連下垂体炎、サルコイドーシス、ランゲルハンス組織球症による下垂体機能低下症が知られています。
それぞれの下垂体ホルモン(ACTH系・TSH系・GH系・LH/FSH系)に対する補充治療を行いますが、適切な補充療法がおこなわれないと生活の質(QOL)が低下しますし、重篤な場合では意識障害・ショックを来たし死に至る場合があります。
5.中枢性尿崩症
下垂体後葉ホルモンのひとつである抗利尿ホルモン(ADH)が欠乏することにより、多飲・多尿が出現する疾患です。下垂体手術による続発的発症、下垂体炎による発症などが原因としてあげられます。治療は抗利尿ホルモン製剤(ddAVP)の点鼻や舌下投与が行われます。
6.成人成長ホルモン分泌不全症
成長ホルモン(GH)は文字通り小児期の成長に必要なホルモンですが、成人においてもGHは少量ながらも必要です。GHが欠落しますと体脂肪増加、筋肉・骨塩量減少などの体組織異常および血中脂質高値などの代謝障害をきたします。疲れやすい、スタミナ・集中力・気力の低下などの自覚症状を伴い、生活の質が低下していることがあります。奈良県立医科大学糖尿病内分泌内科の高橋裕教授は、成人GH分泌不全症がかなり高率に脂肪性肝疾患を引き起こすだけでなく早期から肝硬変に進行し重篤化しやすいことを世界に先駆けて提唱されました。治療は成長ホルモンの自己注射です。1日1回の注射が基本ですが、近年週1回の注射でよい製剤も上市され、治療の幅が広がっています。

<副甲状腺疾患>

副甲状腺とは、甲状腺の背側にある米粒くらいの臓器です。こんな小さな臓器ですが、副甲状腺ホルモン(PTH)を分泌し血液中のカルシウムとリンを常に正常に保つという、非常に重要な働きをしています。PTHが高くなると血液中のカルシウムが高くなり、PTHが低くなると血液中のカルシウムは低くなってしまいます。

1.原発性副甲状腺機能亢進症
副甲状腺が腫大しPTHが過剰に産生されるために高カルシウム血症をきたす疾患です。カルシウムは主に骨から誘導されるので、骨粗しょう症の原因となります。また過剰のカルシウムは尿中に排泄されるので、尿路結石の原因にもなります。
治療は手術での病的な副甲状腺の摘出術ですが、実際に手術を依頼するかどうかは高カルシウム血症の程度、年齢などを考慮し個別に判断しています。
2.副甲状腺機能低下症
PTHが何らかの原因で分泌されなくなったり、あるいはPTH受容体異常が原因で低カルシウム血症を来す疾患です。前者を特発性副甲状腺機能低下症、後者を偽性副甲状腺機能低下症といいます。低カルシウム血症では手足のしびれこむら返り、けいれんを起こしたりします。治療は活性型ビタミンDの服用です。

<膵内分泌腫瘍>

1.インスリノーマ
膵臓にはランゲルハンス島という内分泌組織が無数に存在し、その中にはグルカゴンを産生するA細胞、インスリンを産生するB細胞、ソマトスタチンを産生するD細胞が主に存在します。インスリノーマとは膵臓にできる腫瘍で、腫瘍の大部分がB細胞由来です。腫瘍が自律的にインスリンを分泌し続けるので、低血糖が起こります。動悸や発汗などの低血糖症状、あるいは意識消失がこの病気の発見契機となることがほとんどです。診断には入院の上で72時間絶食試験を行い、確定診断には放射線科と協力の上でカテーテルによるカルシウム負荷試験(SACI)を行います。大部分が良性腫瘍なので、腫瘍摘出術が奏功します。
2.ガストリノーマ
ガストリンを産生するG細胞由来の腫瘍で、膵臓だけでなく十二指腸にも多数発生します。ガストリンは胃酸分泌を刺激しますので、ガストリンが自律的に分泌されるガストリノーマでは胃酸分泌亢進により難治性の逆流性食道炎や胃十二指腸潰瘍が発生します。ガストリノーマは約50%が悪性だとされています。確定診断にはカテーテルによるカルシウム負荷試験(SACI)を行います。治療は腫瘍摘出術ですが、多発ないし転移する症例も多いので根治が困難です。腫瘍残存症例ではソマトスタチンアナログやエベロリムスが使用されます。

<副腎疾患>

副腎は腎臓の頭側にあるえんどう豆大の小さな臓器です。
皮質と髄質に分かれており、皮質からはコルチゾール・アルドステロン・性ステロイドといったステロイドホルモン、髄質からはアドレナリン・ノルアドレナリン・ドーパミンといったカテコラミンが分泌されます。いずれも生命維持に必須の重要なホルモンで、これらのホルモンは不足しても過剰でも身体の変調を来します。

1.原発性アルドステロン症
副腎腫瘍からアルドステロンが過剰に分泌されるために発症する疾患です。アルドステロンは血圧とナトリウムの維持に働くホルモンなので、過剰になると治療抵抗性の高血圧を呈します。以前は非常に稀な疾患とされていましたが、近年では高血圧患者の約10%が原発性アルドステロン症ではないかといわれています。治療は腫瘍摘出術ですが、降圧薬で血圧がコントロールできる症例も多くあります。なお、腫瘍摘出術の適応と判断した症例については、放射線科と協力の上、入院下でカテーテルによる副腎静脈サンプリングを実施し、この結果をもとに当院泌尿器科に腹腔鏡下副腎摘出術を依頼します。
2.クッシング症候群
副腎皮質ホルモンのひとつ、コルチゾールが副腎腫瘍から過剰分泌されることで発症する疾患です。コルチゾールは水分・血糖値・ナトリウムの維持、そして種々のストレスから体を防衛する生命維持に重要なホルモンですが、過剰になると糖尿病・高血圧・骨粗しょう症などさまざまな内科的問題を起こします。これをクッシング症候群と呼びます。
治療は腫瘍摘出術ですが、症例によっては糖尿病や高血圧に対する対症療法で対処したり、ステロイド合成阻害薬(メチラポン・オシロドロスタット)で対処したりする場合もあります。
3.副腎皮質機能低下症・副腎クリーゼ
前述のようにコルチゾールは生命維持に必要なホルモンですので、絶対的または相対的に不足すると副腎皮質機能低下症を起こします。症状としては激しい倦怠感・血圧低下・低血糖・低ナトリウム血症があげられます。顕著になると生命を脅かすこともあり、これを副腎クリーゼと呼びます
4.褐色細胞腫
褐色細胞腫は、副腎髄質あるいは脊髄に沿った交感神経節細胞にできる腫瘍です。腫瘍からはカテコラミンというホルモンが分泌され、このホルモンの作用で発作的な血圧上昇、発汗、動悸、頭痛などさまざまな症状が現れます。治療はαブロッカーの服用、腫瘍摘出術です。

<性腺疾患>

精巣からはテストステロンという男性ホルモン、卵巣からはエストロゲンとプロゲステロンという2種類の女性ホルモンが産生され、女性ではこの二つのホルモンが複雑に調整されることで月経周期が形成されます。さらにこれらのホルモンは下垂体から分泌されるゴナドトロピン、視床下部から分泌されるゴナドトロピン放出ホルモンにより調節されています。

1.中枢性無月経
月経周期があるのは、視床下部や下垂体からのホルモンによる指令があるためです。何らかの原因でこれらホルモンの指令がストップしてしまうと、無月経となってしまいます。これを中枢性無月経といいます。過度なダイエットやストレスが原因となることが知られていますが、原因が不明なものも多くみられます。治療はクロミフェンやカウフマン療法を行いますが、挙児希望の方は産婦人科の先生と連携して治療を行います。
2.性腺機能低下症
疾患としてはターナー症候群・クラインフェルター症候群、カルマン症候群などが知られています。また、小児がん治療後も性腺機能低下症の原因として知られています。成人の場合、性ホルモンの低下により男性では筋力低下・やる気の低下・骨粗しょう症などの症状、女性では無月経・骨粗しょう症などの症状が出現します。小児の場合では二次性徴の遅れや欠如、低身長などの症状が出現します。
治療は男性ではテストステロン(エナルモンデポー)の注射あるいはゴナドトロピンの自己注射、女性ではカウフマン療法を行います。
3.思春期早発症
通常第二次性徴は、女子で10歳頃、男子で12歳頃よりはっきりますが、それが2〜3年以上早く始まってしまうのが思春期早発症です。思春期早発症で問題になることは、(1)早期に体が完成してしまうために、一時的に身長が伸びた後、小柄のままで身長が止まってしまう(2)幼い年齢で乳房・陰毛、月経などが出現するために、本人や周囲が戸惑う心理社会的問題が起きる(3)まれではあるが、脳などに思春期を進めてしまう原因になる病変が見つかることがある、以上の3点です。治療はLHRHアナログを使用します。
4.多のう胞性卵胞症候群
卵巣に小さなのう胞が多数生じる病気で、排卵障害がおこるために月経不順や無月経の原因となります。この病気では男性ホルモンが高くなるためニキビや多毛傾向となったり、肥満や耐糖能障害を呈したりすることもしばしばみられます。内科的治療としては月経困難症に対してクロミフェン、低用量ピル、カウフマン療法を実施しますが、挙児希望の方は産婦人科の先生と連携して治療を行います。糖尿病や高血圧が合併した場合はそれらの治療を行います。

<更年期障害>

更年期とは、一般に閉経の前後5年、約10年間を指して呼称され、医学的には閉経までを周閉経期と呼びます。この時期は女性ホルモンが減少することにより、のぼせ、動悸などの自律神経症状やイライラ、落ち込みなど精神症状が出現したりします。これらの症状により日常生活に支障をきたした状態を更年期障害と呼びます。女性は閉経を契機に動脈硬化・高血圧・肥満・脂質異常症の発症リスクが上昇し、閉経後に骨密度が低下する、いわゆる閉経後骨粗しょう症を発症することが多く、内科的にも重要です。治療は卵胞ホルモンと黄体ホルモンの補充療法(カウフマン療法)を行います。製剤には内服薬、貼付薬、塗布薬があり、患者さんのニーズに合わせて選択します。

<脂質異常症>

1.家族性高コレステロール血症
家族性高コレステロール血症は、LDL受容体関連遺伝子の変異による遺伝性疾患であり、常染色体優性遺伝形式をとります。ヘテロ接合体患者は300人に1人以上、ホモ接合体患者は100万人に1人以上の頻度で認められます。高LDLコレステロール(LDL-C)血症、皮膚ならびに腱黄色腫、および早発性冠動脈硬化症を主徴とします。家族性高コレステロール血症では遺伝的背景のない高コレステロール血症に比べてLDL-C増加の程度が著しく動脈硬化の進展は早く、それに伴う臓器障害の程度も強いため、動脈硬化性疾患の予防を目的としたLDL-C低下治療が必要です。治療には高容量のスタチンを使用しますが、極量のスタチンを用いてもコントロールできない場合や、何らかの理由でスタチンが使用できない場合、若年にして動脈硬化を呈している場合はエボロクマブの自己注射やインクリシランを使用します。
2.家族性Ⅳ型高脂血症
肝臓で作られる超低比重リポ蛋白(VLDL)の増加を呈する高脂血症の一つです。今のところ遺伝的な原因は明らかではありませんが、リポ蛋白リパーゼ(LPL)や肝性トリグリセリドリパーゼ(HTGL)の活性低下、欠損が原因に挙げられます。1000mg/dLを超える高中性脂肪血症が特徴で、動脈硬化や急性膵炎の原因となります。
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